卯之吉が無くなった。
猫の老化は後ろ足から始まる。ジャンプできなくなり、そのうち前足もおぼつかなくなり、歩くこともままなくなる。
先週の木曜日あたりから容態が急に悪くなり、うなされ始めた。人のベッドの上にペットシーツを敷き、添い寝をした。
筋力が衰えた中、それでもしきりに這って擦り寄ってきて頭を押し付けてくる。呼吸が荒く苦しそうだ。うなされる声が「苦しいよ、辛いよ」と言っているかのようだ。自分には名前を呼び、頭をなでてやることしかできない。なんと無力なのか。
病院に連れて行き点滴。先生の見立てによると、筋力の低下で尿をすることもままならないとのことで、その場で強制的に出してもらう。
助手の人が「検査しますか?」と聞いているのに対し、先生が「いや、もういいでしょう」と言っているのを聞き、全てを悟る。
それでも、まだ腎臓は機能しているので、毎日点滴すれば少しは延命できるだろうと思っていた。
土曜日に買い物に行って帰ってきたら、亡くなっていた。側にいてやれなくてごめんね。まだ暖かかった。ぎりぎりまで頑張ったのかもしれない。車の音が聞こえて安心して事切れたのかもしれない。
あまりに安らかな顔で、まだ生きているのかもしれないと、何度も呼びかけたが、既に手足の関節は固くなり始めていた。
卯之吉は自分の中の猫の常識を、色々と塗り替えてくれた猫だった。
当時は確かfj(net news)の里親募集で見つけたのだと思う。アメショー(アメリカン・ショートヘア)の純血種だが血統書が不要なら、15k円で譲るとのことで、もらいうけた。
家には最盛期には5匹まで猫が増えた。そんな中で何しろ純血種のオスとあれば、最初に見送るのは卯之吉だと思っていたが、なんと最後まで生き残り、19歳まで生き伸びた奇跡の猫だ。
猫には絶大な人気があり、一番上のるいもを除いた残り4匹からは大層慕われていた。猫から見てもイケメンだったのだろう。
幼い頃からあまり体は丈夫では無い上に、変なものを齧るので良く病院通いをした。買い値は格安だったが、医療費では、うちの中で一番かかった猫だろう。
他のアメショーもこうなのか知らないが、とにかく人懐こい猫で、むしろ犬のようだった。宅配便が来ると玄関まで出迎えに生き、床にころがって、おなかを出してなでてくれるのを待っていた。猫というのは、とかく自分の気持ちが強くて、それに沿わないことには絶対的な反抗を示すものだ。だっこしようと抱き上げても「今はそういう気分じゃないの」とどっかに行ってしまったり。かと思えば、5分後には自分から膝に乗ってきたりする。これに対して卯之吉は鷹揚で「まぁまぁ」となだめると、「しょうが無いなぁ、ま、いっか」という感じで何ごとも受け入れてくれることが多かった。
15番では4楽章に戻っており、第2楽章はスタカートの左手の上に憂鬱なテーマが進む。
2つ目のテーマも、短調のまま継続。
ここからは長調となりリズミカルなテーマが展開される。
最初のテーマが再現される。
ここからはテーマが16分音符で変奏され、最後は静かに終わる。
楽譜引用は、ヘンレ版から。
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15番は、通奏低音が特徴的な曲で一般に「田園」という通称で知られる。
この曲も初期の曲と同じく、色々なテーマが登場する。
特徴的な2つ目のテーマは最初は幻想的な雰囲気の中に浮かび上がるかのようで、メロディーらしきものが見当たらない。
その後にテーマが現れる。
展開部も長調のままで開始する。
展開部は、最初と違って新しいテーマは使われずに、提示されたテーマが繰り返し使われる。
再現部。
一通り再現が終わった後に、もう一度最初のテーマが現れて終わる。
楽譜引用はヘンレ版。
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第1楽章から第3楽章まで、静かでゆっくりとした楽章から、激しく速い楽章へと昇華していく。これまでの曲には珍しく最後の楽章も、きっちりとしたソナタ形式で書かれている。
最初のテーマはアルペジオ主体で旋律らしきものは無いが、最後の2つの和音の前の音にだけスフォルツァンド指定が付くことで、大きな緊張感を作り出してている。
次のテーマは最初のテーマと対照的に旋律的だ。
ここも和音を主体に、大きな緊張感を作り出すことに成功している。
展開部は長調で始まるものの、緊張が緩和することは無い。
ここでは左手にテーマが現れる。
最初のテーマが繰り返された後、アルペジオ主体のクライマックス。
そしてアダージョを経て、嘆くかのようにテーマが繰り返されて劇的に終わる。この曲は、第1楽章に絶大な人気があるが、やはり第3楽章が傑作だろう。
楽譜引用はヘンレ版
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第2楽章は、無理に明るく振る舞っているかのような短かな楽章。
トリオも長調で、あまり雰囲気は変わらないが、後半はやるせないよう諦めているような感じのテーマとなる。da capoで戻って最初のテーマが繰り返されて終わる。
楽譜引用はヘンレ版
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ベートーヴェンのピアノ・ソナタの中で最も有名な曲の1つ。アルペジオ主体で明確なメロディが無く、強いて言えば左手の進行がメロディらしき存在。
そしてppで微かな印象的な符点の音型が浮かび上がる。
曲は、特に大きな展開もなくずっと同じ雰囲気が続く。最後は左手に同じ音型が現れる。
楽譜の引用はヘンレ版。
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第3楽章は、序奏を伴っている。序奏はゆっくりとした風を感じさせる。
序奏が終わると対照的な速い主部が開始される。
非常に単純なアルペジオだた、曲全体で繰り返し使用される。
ここもアルペジオ主体の単純なテーマが元気良く奏される。
ここで左手に現れるテーマは、最初のテーマの変形と思われる。
ここでは右手に現れる。
ここも最初のテーマの変形。
最後に終わりを告げるテーマが現れてクライマックスに逹っする。
序奏部が繰り返されて、劇的な効果を上げている。
最後はプレストで華々しく終わる。
規模的にも単純なテーマを様々に活用するスタイルも、オーソドックスなベートーヴェンのソナタの完成が見られる。
楽譜引用はヘンレ版から。
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第2楽章は、アルペジオ主体の速い楽章。
極めて単純なパッセージを縦横無尽に展開する様は見事だ。
中間部も非常に単純なパッセージで見事な効果を上げている。
再度最初のテーマが繰り返される。最後は、8分音符分のずれを伴って劇的に終わる。
楽譜引用はヘンレ版から。
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ここから「幻想曲風ソナタ(SONATA QUASI UNA FANTASIA)」というタイトルが付くようになる。
霧の中をゆっくり進むような、和音を主としたテーマで始まる。
和音の中にテーマが浮かぶ。
ここも和音主体であるが、少し雰囲気が変わる。
ここで突如として高速なパッセージとなるが、やはりアルペジオ主体で和音へのこだわりがある。
最初のテーマが繰り返されて終わる。
楽譜引用はヘンレ版から。
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ベートーヴェンのピアノソナタには、時折、このような調性が薄く速い、即興的な楽章が登場する。明確なテーマは無く、混沌とした中にメロディがたまに顔を見せる、印象的な楽章だ。
左手にテーマらしきものがあるが、発展するわけでもなく消え入ってしまう。
ここもリズムが印象的だが、発展性は無い。
中間部も、相変わらずテーマらしきものは無く、押し流されるように進んでいく。
最後に、終わりを告げるテーマが現われて静かに終わる。
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楽譜引用はヘンレ版から。
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